第一章・おいらの御幼少期の秘話・そのⅢ

そのⅢ・おいらの誕生秘話

もうおっぱいの味を忘れちまったけど、

おいらは小学校へ上がる前まで飲んでいたらしい。

末っ子だから独り占めだったのさ。

この世に生まれ出た騒ぎは前に話したけど、

おいらは腹が立ってギャギャ泣いていたら、

だれかがおっぱいを飲ましてくれた。

ド派手に泣いたから喉がカラカラだったから、

味なんか味わっている余裕などないよ、

ごくごく飲んでやった。

そのうちにだんだん気持ちが落ちついてきた。

それからしばらく愛飲させてもらったよ。

だがね、困ったことに、しばらくすると、

おっぱいを飲まないとイライラしたり、

怒りっぽくなったり、

鬱っぽくなったり、

気味悪い精神状態になってきたんだよ。

一種の禁断症状ってやつだ。

おっぱい中毒になったわけだ。

パイ中だな。

おそらく危ない葉っぱが混じっていたかもしれない。

ヤバイヤバイ……。

ま、冗談はともかく、

おいらはおっぱいが無くては生きられなくなった。

そんなダラダラ怠惰な生活はどのくらい続いたろうか………。

そんなある日、

ふと、まわりにいろんなやつらが

退屈そうにおいらを眺めているのに気がついたんだ。

こりゃ何かを待っているんだと、

おいらの鋭い感受性がピンときた。

何か一発芸を見せるべきだとね。

おいら根っからの芸人タイプだったのさ。

それで手始めに両手と両足を動かしてハイハイして見せた。

すると、まわりがすごく喜んでバカ受けさ。

それで気を良くして、立ちあがって見せたら、

これまたバカ受け。

それじゃと調子づいて、

歩いてステップまでしてみせたら、

これがいけなかった。

しばらくしてオモチャのスコップとバケツを持たされて、

屋外にある公園へひっぱり出されてしまった。

これが今でいう悪名高い公園デビューというやつだ。

ここで人生初の社会の荒波ってやつを体験させられたのさ。

その頃は、

まだおいらの国は独立もしてない国連軍(実質はアメリカ軍)の占領地でさ、

肩身のせまい貧乏な暮らしだったから、

公園といっても今とは違いダサイもんだった。

品のいいガキなんかいやしない、

ヨチヨチ歩きのヤンキーたちの溜まり場だった。

(注・当時はぐれた奴らをぐれん隊と言っていたな)

おいらは新座者だから低姿勢で仁義をきって挨拶したんだが、

何が気に食わないのか、

ウンコ坐りでガンつけてきやがった。

おいらはガチの勝負覚悟でウンコ坐りして睨み返した。

するとリーダーらしき可愛いポニーテールのヤンキー娘が、

いきなり砂をぶっかけてきた。

それが合図か舎弟らしき連中も砂をぶっかけてきた。

さらに、

遠巻きで見ていた堅気らしい外野の連中までも

おいらにぶっかけてきやがった。

集団心理っていうやつだな。

これには参ったよ。

おいらは砂だらけになってまった。

もう恐怖と怒りと恥ずかしさでワアワア泣きわめいたよ。

ガキのころは、

誰が見ていようがワアワア泣いたり、

ゲラゲラ笑ったり、

それしかする仕事がなかった。

それでも食っていけたんだ。

芋幹七十郎


 

 

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