第一章・おいらの御幼少期の秘話・そのⅠ

そのⅠ・おいらの誕生秘話

まず、ご挨拶かわりにおいらの生まれた時のことを話してみるよ。

おいらが天才だったことがわかるはずさ……。

おいら齢のせいなのかな、

近ごろ七十年前の生まれた頃をちょくちょく夢に見るんだよ。

おいらは魚なんだよ。

薄暗いけど怖くない海の中をぶらぶら泳いでいるんだ。

マンボウみたいにね。

もちろん犬かきだけどさ。

温度は温めの四十度ぐらい。

ドキンドキンと調子のいいドラムの音にあわせて

ご機嫌に泳いでいたんだよ。

こんな状態がずっと昔から永遠に続いてきている感じでさ、

何ていうか、萌えるという感じかな。

何もかもしっくりしてご機嫌幸なんだな……。

ところがだ。

ある日、いきなり首根っこをつかまれて引っ張り出されたんだ。

それも何の断りもなくだ。

まるで山芋でも無理やり引っこ抜く感じでさ。

ビックリしたのなんのって、

これは野蛮だよね、まったくパワハラだ!

外に出されたのはいいが、

明るすぎて目を開けられやしない。

頭蓋骨はへこむで首は痛い、それに真っ裸だから、

寒いし恥ずかしいし、情けなくて大声で泣き叫んでやったよ。

「助けてくれ!」ってね。

まったくさ、酷い話しだよね。

これがおいらの夢に現れた神聖なる誕生、

感動的な誕生の実態ってわけさ。

ちょっとした残虐映画だね。R15指定かな。

そうはいっても、誰かが助けてくれたから、

今のおいらがあるのだから、感謝すべきだな。

ずぅっとあそこにいるわけにはいかないからね……。

ひょっとして一歳ぐらいの赤ん坊なら、

おっかさんの腹の中で暮していたころを鮮明に覚えているかもしれないな。

十月十日のあいだ何を考えていたのか、

ちょっと聞いて見るといいね。

“おいらは何処から来たのか、

おいらは何者なのか、

おいらは何処へ行くのか” 

(ゴーギャン提言のパクリ)

芋幹七十郎

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